昼休み、私はそのラブレターの約束通り中庭に来てきた。
彩葉たちも「瑞希なんかを好きになったやつの顔が見てみたい」とついてきそうになったが送り主の気持ちを尊重するために断った。というか理由酷くない?

キョロキョロと周りを見渡す。まだ相手は来ていないようだ。

どうしよう、絶対靡(なび)かないと思っていたけど結構ドキドキしてるんだが。これでイケメンが来たら好きになっちゃうかも。
いやいや、私の店長への気持ちはそんなものなの!? 告白されただけで気が変わってしまう程度の気持ちなの!? ううん違う! 私は店長を愛してる!

でも!


「イケメンだったらめっちゃ嬉しい!」


そう言った私の腕がクイクイッと引っ張られた。
え?何?、と後ろを振り向くとそこに立っていたのは私よりも少し背が低い口元にマスクをした女の子であった。

私も結構背が低い方なのでその子はかなりの低身長ということになる。


「あ、あの……」


どなたでしょうか、と窺うと彼女はびくっと反応し、慌てたように制服のポケットに手を突っ込む。
知り合いだろうか? いやでも初めて見た子だ。そんなことを考えていると彼女が取り出したのはメモ帳とポールペンだった。

すると彼女はそこへさらさらと文字を書いていく。


「ご、ごめんなさい、私人を待ってるんだけど」

「っ……」


早くしないとラブレターの送り主が来てしまう。
そう思っていると彼女は書き終わったのか、そのメモ帳をこちらの方へと向けてくれた。

そこに書かれている文字を見て漸く気が付いた。
彼女が書いた字はラブレターのあの整った字と瓜二つだったのだ。


【来てくださってありがとうございます】


私はその言葉に「え!?」と声を挙げる。もしかしてこの人がラブレターの人!? 女の子じゃん!
つまり私は女の子に好かれていたということか!? いや、普通に考えたらこれはラブレターじゃないのだ!

ただの勘違いだ! 恥ずかしい!

このこと彩葉とか光里に話したくないな、と思っていると彼女は何か言いたげにこちらを見つめていたので気を取り直して笑った。