その日の放課後、
「小野さんいる?って、わぁ! どうしたの!?」
「てんちょー……」
休憩室に入ってきた店長は項垂れている私に驚くと慌てて駆け寄った。
どうしたの?気分悪い?、と心配そうな表情でこちらを見る店長の優しさに泣きそうになる。そういうところ本当に好き。
「全然アルバイト希望の子見つけられなくて」
「……」
「ごめんなさい……」
私が申し訳なく思っていると店長はそんな私を見てふっと笑みを零した。
「そんなこと、全然小野さんが気にしなくていいんだよ。それにバイトない日もそうやって仕事のこと考えていてくれて嬉しいし」
「店長……」
「無理矢理頼んじゃったのはこっちなんだし、気にしないで」
そう言って店長は私の頭の上に手を置くと優しく撫でつけた。
無理矢理だなんて、私が何でもするって言ったから店長は仕事を与えてくれたわけで、その期待に添えていないのが悔しいんだ。
店長は優しいから私が新しいアルバイトの子を連れてこなくても笑ってくれる。
それを知っているからこそ、絶対店長の役に立ちたいんだ。
そう再び闘志を燃やすと私は「はい!」と、
「何か元気出てきました! もう少し頑張ってみますね!」
「うん、ありがとう」
「ていうか店長が自分から私に触れてくれたのって今回が初めてですよね」
「え、」
店長はその言葉に慌てたように手を離した。
「ご、ごめん、そんなつもりじゃ」
「いいんですよー?もっと撫でてくれても」
「もう撫でないよ」
「何でですか! もっと触ってくださいよ!」
「女の子がそんなこと言わないで」
取り敢えずいつもの小野さんに戻ってよかったよ、と店長は安堵の息を吐く。
そんな彼にもう少し頑張ってみようと思うのだった。