と、


「おい、」


低い声が私の耳に届いたと同時に私の肩に置かれていた腕を弾かれて別の腕が私の体を引き寄せた。
え、と驚き瞼を開けると、背中に人の体温を感じて振り返る。

視界に入ってきたのは白いワイシャツだった。


「(だ、誰?)」


初めて聞く声、見知らぬ顔、掴まれた左手。それなのにどうしてだか安心感がある。
突然現れたその人物に不良たちは「な、なんだよ」と怖気ついた様子だった。


「上条高校の教師だ」


私の腕を掴んでいる男性から紡がれたのはここじゃ有名な進学校の名前だった。
その高校名に先ほどまでは調子に乗っていた不良たちも顔面蒼白させている。


「お前らはあの不良校の生徒だな? ここでお前らの高校に連絡して先生方に迎えに来てもらっても良いんだが。"お宅の生徒さん他校の女子に絡んでました"って」


そう言ってポケットからスマホを出した男性は画面をタップし、それを耳に当てると目の前の男たちを鋭く睨んだ。
すると「行こうぜ!」とさっきまでの威勢の良さはどこに行ったのか、情けない声を漏らした金髪に続いて不良たちは戸惑いを残しつつも私たちから離れていく。