後ろからそろりそろりと近付いて無防備に空いていた肩に手を置くと店長の体がビクリと跳ねた。


「お、小野さん!?」

「正解です」

「いや、こんなことするの小野さんしかいないからね」


どうしたの?、と困ったように振り返った店長は優しく私の手を退けた。私の拒絶する動きにも普段の元気が感じられない。
店長は近くにあった椅子を動かして私に座るように促した。

「店長、どこか具合が悪いとかないですか?」

「ん? 無いけど」

「でも最近ずっと様子おかしいですよ。元気無いし、溜息も多い」

「……」


心配です、と告げると彼は何かがうっと喉に詰まったかのような表情になった。
そして軽く自分の心臓部分を叩くと気を取り直して私のことを見る。


「ごめんね、ありがとう。でも大丈夫だから」

「本当ですか? 私に出来ることないですか?」

「出来ること?」

「何でもします!」


私は店長の両手を掴むとその手を自分の方へと寄せた。
そのせいで前に引っ張られた店長は「えっ」と驚いた表情を浮かべる。


「店長のためなら何でもするので、役に立ちたいです」