二人が帰った後もバイトは続く。今日は平日だから人少なくて楽だけどフロアのアルバイトが紅先輩しかいないというのが辛い。あの人と話したら無性に疲れるから本当に勘弁だ。


「紅先輩って顔だけ見たら本当に得してますね」

「何だと?」


とか言いながらも相手にしてしまう私。だって紅先輩一人でいたら可哀そうなんだもん。私が相手をしてあげないと。
だけど話題のチョイスを間違ってしまったかもしれない。


「は? 得してんのか俺?」


良かった! 馬鹿だから馬鹿にされてるの気付いてない! 馬鹿でよかった!


「私の友達が紅先輩のこと格好いいって言ってたんですよ」

「はぁ? それ先言えよ。そいつら帰ったのか」

「はい、結構前に」

「しかし分かるやつらだな、俺の魅力に気が付くなんて」

「そりゃ隣に蒼先輩がいなかったらそういうこともありますよ。二人並んだら確実に蒼先輩の方がイケメンですもん」

「は?」


やだやだ、怖い怖い。本気で怒られる前に退散した。