私はゆっくりとその場を離れようと足を動かす。さっさと駅の中に入れば男たちは追いかけてこないだろう。もし何かあれば駅員の人に助けてもらえばいいし。
大丈夫。足の速さには自信がある。私はダッシュを仕掛けようとすると……


「おい、どこ行こうとしてんだよ」


私の肩にどしんと腕を置かれた。それは紛れもなく私に絡んでいた男の腕で間違いなかった。
サーっと血の気が引いていくのが私でも分かる。だらだらと冷や汗が止まらない。


「あれあれ? もしかして逃げようとしてた?」

「えっと、あの……」

「もしかして俺たちが怖い、とか?」

「えー、俺たち何も怖いことしないよー?」


君が大人しくしててくれればね?、と含ませたように私の耳元で囁いた声にぞわっと背筋が凍る。
なんで私がこんな目に、もしかして今日って厄日だった? 朝の星座占い見てくるの忘れた。

私の前に現れるその三人組はニマニマと顔を歪ませ私を見てくる。
どうしてこんなに人がいるのに誰も助けてくれないの? この人たちが有名な不良高校の制服着てて関わりたくないから?


「(誰か……!)」


届かない祈りにぎゅっと強く瞼を閉じる。