朝、
職場のバンケットオフィスに
出社したら、朝のミーティングで
けっこうな事になってたってさ、
ミズキ先輩の話で
初めて知ったよ。

「昨日は、皆さんお疲れ様。
ご存知かもしれませんが、
急遽対応になったレセプション
会見ですが、依頼企業からも
大変評価を頂きました。
加えて、夕方のメディアは
全局ニュースに あの会見が
アップされました。スタート
から考えても 快挙でしょう。
全員の健闘、課長も本部より
労いと、讃えをもらえました。」

そこで、ミズキ先輩がさ、
最高の美女スマイルを輝かせた。
何十年に一回ある秘仏開帳
並みだよ。
ありがたやー。心ん中で拝む。

「本日は、より気を引き締めて
ヨロシクお願いします。
昨日のメディアリリースから
ボトルシップの取材と、
大使補佐クラスで行われる
ミーティングが予定以外に
スケジューリング
されましたので、、、」

今回の式典招待は、195ヵ国に
為されて、うち王族26組、
国家元首が100組ほど来日、
残る国賓代理大使が65組来日。

これは未曾有の異次元的
国際来賓の数だ。
この数でさえ、実際上式典に
参加する人数で、同伴する
大臣や官僚、補佐官も入れれば
倍の数では 足りない。
少なくとも1000組ほどは、
海外からの賓客が来ている。

そもそも、このヒルズヴィレッジ
ブランドホテルにはさ、
どれぐらいの国賓が今いるのだろう?と思うと 少しゾッとする。

都内の宿泊先は、
滞在だけの場ではなく、
友好外交の場所になっていた。

セレブも多いヒルズでもあるから、セキュリティは半端ないけど
それこそテロの標的にでもなれば
とんでもない。くわばらくわばら

ふと、昨日
ケイとカフェからモールの外へ
出て、じゃあと別れた後。
みれば ケイはさ
ヒルズヴィレッジのレジデンス
方向へGパンにポケットに
手を突っ込んで 歩いて行ったよ。

まあ、
ここを所有する財閥企業の
ペントハウス扱いの部屋が
レジデンスにもあるって、
同僚お嬢さん達がさ、
いつか話してたから
きっと、そんな辺りが
ケイの宿泊でも用意したん
だろう。レセプション救世主の
マジシャンだしと考えて、
頭を振って仕事モードに

切り替え切り替え。

官邸や大使館以外での
協力国での会議や、
初見の国同士が 補佐官クラスで
ファーストコンタクトミーティングをしたりが、うちみたいな
都内バンケットホールでとなる。

だからさ、
ホールのタイムスケジュールを
PC上で細かく確認よ。

やっぱり。

ここに来てのね、
昨日のレセプションは、外交官
のみならず、賓客と民間経済界との会合に起爆剤を与えたようだ。

もともとの 予定を越えて、
急遽リスケジュールされたさ
項目があったよ。
課長バタバタだろうな。

バンケットホールで持つ
幾つかのサロンは、
一斉に外交ミーティング予定で
埋められ 始め
満帆に成りつつあったから。

それでもこれは、ルーティン。
昨日みたいな事でなければ、
セッティングのみがさ、
バンケットスタッフの仕事よ。

ニュースでやっているような、
元首のお買い物や、視察なんて
コーディネートは官僚の管轄。
いやはや、あれはたまったもんじゃないよね。

そういえばさ、
ケイも へんなお土産を
買っていたよ。

へんなというのは 失礼か。
でもさ、なんでカフェにさ、
達磨とか、けん玉?ついでに
花札とか 売ってるかな?
それで、それを買うかなー。

そうなのだ
別れ際のケイは、達磨を小脇に
挟んで、ポケットに手を
突っ込んで帰るという
わけのわからない
出で立ちになってたね。

まあ、コメッサがさ
持帰りの袋は無しでと、
ケイが 言ってさ、
Tシャツの胸元にさ、
けん玉と花札を 飲み込ませた時の
顔ったら ケッサクだったよ!

「フフフ」

ヤバい、つい笑いが漏れた。
向かいのミズキ先輩がさ
変な顔してるって。

さて、問題は 仕事じゃなくて、
昨日の『ケイヤク』仕事の方だ。

幸い、ヒルズヴィレッジにある
昨日のコンセプトモールは、
日本の良質ブランドや、老舗店を
集めている珍しいモール。

ケイがさ、昨日、言っていた

『出来るだけイージーに
tripしたい。それも出来るなら
この国のGood pointを 見たい』

と言うなら、もってこいの
フロアもあるし、店頭体験できる
ショップもあるはずよ。

なにより、
モールの売りになっているの
ルーフトップガーデンが、
新進気鋭の庭師が作庭した
本格的日本庭園なのだ。
そう考えるとさ
まずわたしの、コンダクター
仕事初めは、
コンセプトモールからさ
スタートさせるのは、どうだろ?
お手軽『イージーtrip』だよ。

そういえばさ、昨日
帰りにモールの外に出てさ
芝生を見たら、段ボールは
なかったんだよね。
小人が 片付けたんだろうよ。
「ハハ」
ヤバ。ちゃんと確認よね。

じゃあ、今日あたりから、
本格的に要人ミーティングが
動き出すから、ホールセッティングに 人員が必要になる。

下のフロアへ確認と挨拶に降りる

このヒルズヴィレッジにある
タワーオフィスは、

地下1階からの 地上57階建てで
屋上には 緑化型最新ヘリポート。
56階は展望フロアだ。

49~55階が
うちのバンケット部の
親企業になるブランドホテルが
入って、
会員制VIPラウンジとか、
かなり高級系レストランフロアも
ある。
そして、7~48階が
昨日お世話になった『武々1B』
とか、
シェアカンパニーダイニングが
入っている、オフィスゾーン。
これは
ヒルズの極みだよ。

そして、6階が我がバンケット部
のあるホールフロア。
こう考えても、うちの部が
子会社的な位置になるのが
わかるよ。

6階の作りだけが、異質なのは
サロンホールって使用目的だけが、理由じゃないんだってさ。

なんでも、ヒルズヴィレッジを
所有してる旧財閥総裁の肝いり。
まあ、趣味がかなり
反映されてるってわけよ。

で、6階以降下のフロアには
プレミアムシネシアター、
カルチャースタジアムがあって、
割りとライフアシスタントする
テナントとかが
入ってる。

で、これから行くのがさ、

チューターやコーチャーはじめ
シッターやヘルパーの
主に派遣業をしている
ディスパッチセンターなわけよ。

「タムラさん、今から下に行く?
悪いけれど、ヤマモリさんに、
このタイムスケジュールを、
渡してくれるかしら。マル秘ね」

下に降りる準備をしてたら、
ミズキ先輩から、黒ファイルを
渡されたよ。

メールで送れない、人物の予定が
入っているのだろうけど。

わたしみたいに、
ホールセッティングの人員だけで
なく、
下のデスパッチセンターには
優秀な通訳や、ボディガード、
ショートステイ執事やメイド
なんかも派遣できるような

SSランクの派遣センターだよ。

「だから、わたしじゃなくて、
下なら ツアコン、いるのに、」
つい、ため息だ。

「何?何か言った?タムラさん」

しまった声出てた。

「いえ、何も。下行きます。」

あ、ならさ、
ケイのコンダクターする場所を
ちょこっと、相談できるかもよ。
よし、ケイトウとダレンにも
昨日のお礼に
向かいのモールで和菓子でも
買って持っていこう!

1階からさ、この6階までなら
わたしはさ、
平気で階段登り降りするよ。
常からしっかり
鍛えております。

「今から、下行きます、、」

わたしは、今日も階段で
トレーニング兼ねて
特にこの10日間は、
走り廻る。

なのに、和菓子を買いに行った
モールで、へんな光景を
見てしまった。