「あの、、、貴方。こんなとこで
何されて、。いるのですか。」

アサミは
ヒルズヴィレッジの
タワーオフィスから 退社して、
同じ区画内で テナントが入る
コンセプトモールに
向かって歩いていた。

ヒルズヴィレッジの区画には
タワーオフィスの向かいに
日本ブランドの ショッピング
モールと、
総合医療センター。
タワーと同じオーナーが建設した
レジデンスがあって、

それらは 緑豊かな
ランドスケープ デザインに
なっている。

モールの前には
グリーンパークがあって、
シンボルツリーが
都心でもナチュラルな景観を
作っていた。

そのグリーンパークの
隅っこの芝生。

子猫が いそうな、
段ボールに入って
真っ赤な傘をくるくる回す
不審者を、
タワーエントランスを出た
アサミは、目にして
ギョッとなった。

たまに、前を行く人が
チラチラ見ているのも
仕方無い。

近づけば、段ボールには
ご丁寧に 黒マジックで、
『Do magic for you』と
書いてあるわけで。

朝と同じでさ、
髪と髭で 半分は顔がわからない
不審者になってるよ。

「Street、マジック!!」

いや、悪戯しちゃうぞ的にさ、
マジックって言われてもさ。

だいたいさ、
こんなとこでしなくてもいい
凄ーーーい
パフォーマーなんじゃないの?

「Do magic for you!
君の為に 魔法を使うよ。」

そう、目の前で
髪も髭も
伸びっぱなしの 不審者は
わたしの脳内葛藤を
知ってか しらいでか

また例の真っ白い
歯をニカッとさせて、

これまた白いTシャツに
デニム姿の
三角座りポーズなんかして、
片方の手を出すと
指で輪っかを作った。お金!

「Please pay the price!
対価?は お願いしますから。」

ハイハイ
0円は、スマイルだけね。
にしても
この不審者はさ、本気だろうか?

アサミは怪訝な顔をしつつも
鞄から出した、財布を開けて、
答える。

「OK。マジック、プリーズ」

だってさ、
今日は この人によ
助けてもらったようなものだし。

それにさ、
あんな夢みたいなのをさ、
ううん、あんな凄くなくて
いいよ。
本の少しでも、小さくても
楽しい 何分かを
わたしも 久しぶりに持って
みたい。
けど、
うーんとさ。いくらだろう?

500円玉を出して、仕舞って
1000円札を おもむろに 出してと
迷っているうちに、

「baby、名前は?」

ん?baby?

「アサミ。あれ?あ、そうか」

思えばさ、
ギャラリー『武々1B』の
ハジメさんの口聞きでよ、
ダレンが窓口に なってくれて
後はさ、ミズキ先輩に
ダレンとやり取りしてもらった。

レセプションセッティングが
怒涛だったから、
アーティストエスコートも
課長がしてたし、

「ちゃんと挨拶してないですね」

終わって、あの再会もさ
すぐに課長が
アーティスト リカバリーに来て
ろくに会話もしないままさ
別れたんだったっけ?

財布をもどし
まずは、鞄から名刺を出して
アサミは 両手で差し出す。

どうやらさ、日本語も 全然大丈夫
みたいだしね。

「アサミ。魔術師ケイです。
これから ヨロシク。」

そう言われた とたん、
ケイに渡した名刺が
『ボン』と音を立てて、
マジックファイヤーが上がり

わたしの目の前にさ
一本の赤い薔薇の花が
差し出されていたよ。
凄い!!

「あ、あの、サンキュー。
ケ ケイ、 朝。わたした食べ物
は、 大丈夫でしたか。」

目の前で 薔薇を差し出した
ケイは、もう方の手で
赤い傘を なんでもない様に
肩でくるくる回している。

わたしは、挙動不審。
もらった薔薇を、鞄に差して
朝、気になってた事をめぐらす。

こ、これ お金は、?っ

動揺を隠すようにさ
ケイに聞いたんだけど。

「助かりマシタ。Crow達に
モーニングを 取られマシタから」

ケイの表情は 伸びっぱなし前髪で
分かりずらいけどさ、
口元が ヘニョっと 下がっんだよ。

「そ、それは、、悲しいですね」

「エアロバイクで Human
エンジンしてきてのシウチ。
起きあがれない。アイムdying」

そうおどけて、親指で首を
切るポーズをケイは、
するけどさ、
もう 朝のは コメディなんだけど。

なんかね、今のは様になる。

て、いつの間に、、
雨が降り始めていたんだろう。

「Raining?」

ケイは、
くるくる回していた傘を、
肩からスッと 外して
わたしに 入るように
持ち直してくれていた。

段ボールの中に立ってるけどさ。

「あの、とりあえず 雨を、
しのぎましょう。えと、中に」

雨の中で立ち話も、何だし
そう、コーヒーで、薔薇のお代は
チャラになる?って
モールの中を示してさ、
移動をしようと思ったんだけど

「、、その、段ボール、
持っていかなくてもいけます?」

赤い傘を相合傘で
ケイが そのまま 段ボールから
出て歩きはじめたかもんだから、
つい聞くと、事も無げに

「ノン。すぐリカバリーする。」

そう返事された。
なんだ?小人でも使うのか?

わたし達が モールに入る
直前に見てもね、段ボールは
変わらず芝生に
佇んでいたけどさ。

「アサミ。ショッピング?」

差していた赤い傘を
今度は くるくると
畳んで、髪で半分見えない
目元に、眼鏡を掛けたケイが
聞いてくる。

眼鏡、、。なんかのキャラみたい

そうだ!ペットショップを
見ようと

「鳥を、リトルバードを、欲しく
なって、ちょっと見ようかなと」

そこまで言うと、
ケイは ゆっくりと 長い人差し指を
一本立てて、わたしの 唇を
縫い止めた。

なんだよ、いちいち、、
?!

「魔術師ケイが、アサミには、
バードをあげましたから、」

No problem だと、指を解く。
その手を開いて見せてくれると
あの真っ白いオカメインコが
乗っていた。

「この子!スノーホワイトの
オカメインコ!!う愛い、、」

ケイの手のひらから、
わたしの指に ピョンと飛び乗る
オカメインコの 後ろ頭を
撫でてあげる。

指にスリ寄る その小さな
頭の下、羽の間に レモン色の
ハート模様まで あったりしてさ、
ウイヤツ、この上無いよ!

「名前は、『ティカ』
Amulet の バードだよ。」

お守りってさ、ことよね。
スノーホワイトの オカメインコさ
相場って いくらだろう?

「えと、余り凄い子は、もらえ
ないです。けど、譲ってもら
えるなら、、お金払います。」

すでに、この子に魅了されて
しまった わたしは、
なけなしのヘソクリを はたいて
譲ってもらう決意を すでにした。

心震えたらさ、即決よ。なのに

「ノー、マネーだ。」

ケイはさ
一言呟くと、『ティカ』を掴んで
手のひらで消してしまったのよ!

顎が外れそうに、
『ガーン』のマンガ音がしそうな
くらいに、
それはもう ショックをさ、
受けた顔をしていたと思う
わたし。

うううっ、。酷い!嫌がらせだ。

あれか!朝の 投げ込んださ、
味噌汁とか、助かったけどっ
マズかったのか?闇にクレームか

「わたし 鳥、見に行き、ます。」

もう 片言でしか しゃべる気に
ならないのに、『くそケイ』は、

モールの入り口に、
テナントを広げている 書店型
コンセプトショップにある

AIロボットとか、
リモートゲストロボットを
物珍しそうに 追いかけていたよ。

都内とかにも何店舗かある
店内をウッドデザイン本棚で
ゾーニングした 話題のショップ。

1日潰せそうな、蔵書と
書店では とてもありそうにない
近未来の家電や 、
ハイスペック雑貨がディスプレイ
されている。
それがセンスよく
売られていてさ、店内を
歩くだけで 楽しいんだよね。

ほら、
LEDの光で四方を照らす
鏡なんて、実は 大型スマート
ミラーフォンなんだよ。
女優ミラーな姿見なだけでなく、
下にさ、ローカルから、
ワールドワイドな ニュースが
流れて、デジタルタイムも出る。

あっちにさ、
磁石で宙に 浮いている球は、
ライトスピーカーで、 地球儀や、
ハウスプラネタリウム
にもなるんだよ。

そんな ディスプレイ品を
あちこち触っては、試す、
『くそケイ』は、むさ苦しい
子供みたいだよ。

「アサミの、ライスボールの
マヨネーズテイストは 凄い。」

太陽熱だけでBBQを焼ける
スマートな 近未来キャンプ品の
細長いトレーを出したりしながら
いきなり
ケイは 話てきた。

「あれは、手作りマヨネーズに、
お醤油、、ソイソースを、、
プラスしてるんですよ。」

ナンプラーとか、魚醤とかがさ、
ある国なら、美味しく感じる
のかもしれない。かもね。

「ハンドメイド?マヨネーズを」

別に、難しくないし、
最近は 流行ってるからと
ケイには いいながら、
まあ 節約が 理由の大半だとも
正直に 説明。

「作れるものは、作らないと。」

だからさっきから いろいろと、
今どきの女の子あるまじきさ
感じになるのよと、

『ティカ』が消えて残念だと
闇に 非難しとく。

そんな風に、アサミが
冗談めかして言うと、

ケイは アサミをジッと 見ている。

「あ、でも、さっきの薔薇の
マジックは素敵でした、から、
コーヒーでイーブンできます?」

アサミは、
ケイに 確認するように 伝える。

のに、『くそケイ』は
全然すっとんきょうなセリフをさ
吐きやがったよ。

「OK、Let's make a ケイヤク」

はい?

「契約?」

「そー、ケイヤクだ。君と。」

あ、今のイントネーション。
本当は、
全然、日本語しゃべるよね?
貴方。