花房くんについていった末、バックヤードの奥の部屋に連れて行かれた。

その中はラウンジに負けず劣らずの煌びやかな部屋だった。椅子に座る20歳くらいの男。その脇には私よりも年下に見える双子が一組。そして私たちを案内してくれた花房くん。

これが、お父さんの言ってた情報屋?
想像よりもメンバーがずっと若くてビックリする。

「どうぞ。座って。」

椅子の男が私たちにソファーに座るように促す。
私は一応、七桜の顔としてここに来たのだ。それを理解している私は息を吸う。

「七桜組、次期組長の七桜詩織です。父と母は急用でこうして私が代わりに来させていただきました。
今年もよろしくお願いします。」

「え?マジで女なの?萎えるわー。」

「おい、(らい)…すみません。」

双子の片割れ、雷と呼ばれた方が私に対して失礼な口を聞き、もう一人の双子が、私に謝った。
私は別に良かったのだが、雷くんの話を聞いた葵の方からプツンと音がする。

「…お嬢は強いですから、君を倒す程度赤子の手首を捻るのも同然。萎える必要はないですよ。」

葵は何というか黒い顔。
そんな葵の挑発まがいの言葉に、雷くんは、へぇと笑ったが、何というか空気が凍った。
…もう、葵はあくまでも護衛なんだから、口はなるべく挟まないでねと言っておいたのに。
私はため息をつく。

「すみません。こういうところがあるんです。こいつ。」

私は最善の手を考え、そう言ったときだった。椅子に座る男が、私に話しかけてきた。

「ねぇ、ここの一員になってみない?七桜詩織さん。」

「…は?」

おっと、心の底から声が漏れてしまった。

「…急にどうしたんですか?」

「急にじゃないよ。俺らは、まぁ、雷以外は、ずーっと君のこと狙ってたんだ。
女のメンバーが欲しかったんだけど、危険と隣り合わせだから強い子がいいなーって。」

核心に触れているようで、触れていない質問の答え。

それに、なんか、ここにいる人からは私を値踏みしているのがそれとなくわかって気持ち悪い。

もうさっさと帰りたい。それで寝たい。という思いがふつふつと湧いてきた。

「そんなに私を勧誘したいなら、うちの番号にまた明日の夕方にでもかけてください。」

とだけ残し、部屋を出た。
自分でも、品のない帰り方だなと思った。