***
お嬢と葵が一日総長をする土曜日の朝。車にガソリンを入れて帰ってきた俺、若狭は欠伸を噛み殺す。
出発の5時まで後1時間。仮眠でも取ろうか。そう思い、背もたれに体を沈めたときだった。
「若狭。」
俺を呼ぶ声がした。その声に俺は思わず目が覚めた。
「お嬢!」
そこには全開にしている運転席の窓から覗き込むお嬢の姿だった。
「あ、ごめん。寝てた?」
「いえ、とんでも。…お嬢こそ朝早いっすね。」
俺の言葉にお嬢はエヘヘと笑い、
「実はさ、若狭に相談に乗ってほしいことがあって。それで早起きしたの。」
と言った。
「…相談、っすか?」
お嬢、やっぱり何か悩んでたんっすね。
俺でよければ、いくらでも聞きますよ。
いじめの話ですか?それとも次期組長としての責任の話ですか?
なんでもどんとこいっすよ。
「…えっとね、2人ほど私のことを好いてくれる異性がいるんだ。でも、私、2人とそういう関係になりたいわけじゃなくて…。友達でいたいっていうか。
若狭ならどうする?1人を選ぶ?それともズルズル関係を続ける?いっそのこと関係を無しにする?」
おっと、なんか俺が思ってた悩みとは別ベクトル…。
「…勘弁してくださいよ、お嬢。俺、彼女いたことはおろか、告白すらされたことないんっすよ?」
「え!嘘!」
お嬢はもともと大きい目をより見開いた後、俺から目を逸らし、
「…なんか、ごめん。」
と謝った。
「…ちょっと失礼っすよ、お嬢。」
「ほんと、ごめんって!」
今度は焦ったようにまた謝るお嬢。今日のお嬢は表情がコロコロ変わって面白い。
「…まぁ、悩みの話に戻しますけど、まだその口ぶりだと最近のことなんでしょう?急いで結論出さないでいいんじゃないっすか?異性2人を侍らせてるっていう時間をまだ楽しんでみては?」
俺は、くすくすと笑いながら俺だったら絶対そうするだろうということを言った。
すると、お嬢は、「なるほど。」と笑い、
「確かに、焦って結論出さなくてもいいのかも…。
とりあえず今は自分のことに集中した方がいいかな…。」
とブツクサと呟いた後、
「ありがと!若狭!」
と満面の笑みを浮かべた。
「お役に立てて良かったです。けど、どうして俺だったんっすか?葵とかの方が相談しやすいでしょうに…。」
「…あーあはは。葵は…うん。ちょっとね…。」
言葉を濁すお嬢は苦笑いだった。
「…本当は誰にも相談するつもりなかったの。恥ずかしいし。
でも、自分だけの力だとどうにもできないんじゃないかなって思って…。それで、相談しようって決めたの。で、するなら若狭かなって。若狭はなんというか普通って感じがするっていうか。王道の答えをくれそうって思ってさ。」
「……やっぱり失礼っすね。お嬢は。」
「ごめんって!でも今のは褒め言葉だから!」
お嬢はほんとに失礼だ。でも、そんなところも嫌いじゃない。
このまま、車乗っときますか?そう聞こうとしたとき、車庫のシャッター側の入り口から葵が来た。
「…あ、こんなところにいた。お嬢、探しましたよ。
奥様がレディース時代に着ていた特攻服着てほしいそうで…。どうしますか?」
「嘘でしょ…あれ着る気ないから、制服にしたのに…。今行くー。」
お嬢は葵の方へ走っていった。
「若狭、ありがとね。」もう一度そう言い残して。
お嬢と葵が一日総長をする土曜日の朝。車にガソリンを入れて帰ってきた俺、若狭は欠伸を噛み殺す。
出発の5時まで後1時間。仮眠でも取ろうか。そう思い、背もたれに体を沈めたときだった。
「若狭。」
俺を呼ぶ声がした。その声に俺は思わず目が覚めた。
「お嬢!」
そこには全開にしている運転席の窓から覗き込むお嬢の姿だった。
「あ、ごめん。寝てた?」
「いえ、とんでも。…お嬢こそ朝早いっすね。」
俺の言葉にお嬢はエヘヘと笑い、
「実はさ、若狭に相談に乗ってほしいことがあって。それで早起きしたの。」
と言った。
「…相談、っすか?」
お嬢、やっぱり何か悩んでたんっすね。
俺でよければ、いくらでも聞きますよ。
いじめの話ですか?それとも次期組長としての責任の話ですか?
なんでもどんとこいっすよ。
「…えっとね、2人ほど私のことを好いてくれる異性がいるんだ。でも、私、2人とそういう関係になりたいわけじゃなくて…。友達でいたいっていうか。
若狭ならどうする?1人を選ぶ?それともズルズル関係を続ける?いっそのこと関係を無しにする?」
おっと、なんか俺が思ってた悩みとは別ベクトル…。
「…勘弁してくださいよ、お嬢。俺、彼女いたことはおろか、告白すらされたことないんっすよ?」
「え!嘘!」
お嬢はもともと大きい目をより見開いた後、俺から目を逸らし、
「…なんか、ごめん。」
と謝った。
「…ちょっと失礼っすよ、お嬢。」
「ほんと、ごめんって!」
今度は焦ったようにまた謝るお嬢。今日のお嬢は表情がコロコロ変わって面白い。
「…まぁ、悩みの話に戻しますけど、まだその口ぶりだと最近のことなんでしょう?急いで結論出さないでいいんじゃないっすか?異性2人を侍らせてるっていう時間をまだ楽しんでみては?」
俺は、くすくすと笑いながら俺だったら絶対そうするだろうということを言った。
すると、お嬢は、「なるほど。」と笑い、
「確かに、焦って結論出さなくてもいいのかも…。
とりあえず今は自分のことに集中した方がいいかな…。」
とブツクサと呟いた後、
「ありがと!若狭!」
と満面の笑みを浮かべた。
「お役に立てて良かったです。けど、どうして俺だったんっすか?葵とかの方が相談しやすいでしょうに…。」
「…あーあはは。葵は…うん。ちょっとね…。」
言葉を濁すお嬢は苦笑いだった。
「…本当は誰にも相談するつもりなかったの。恥ずかしいし。
でも、自分だけの力だとどうにもできないんじゃないかなって思って…。それで、相談しようって決めたの。で、するなら若狭かなって。若狭はなんというか普通って感じがするっていうか。王道の答えをくれそうって思ってさ。」
「……やっぱり失礼っすね。お嬢は。」
「ごめんって!でも今のは褒め言葉だから!」
お嬢はほんとに失礼だ。でも、そんなところも嫌いじゃない。
このまま、車乗っときますか?そう聞こうとしたとき、車庫のシャッター側の入り口から葵が来た。
「…あ、こんなところにいた。お嬢、探しましたよ。
奥様がレディース時代に着ていた特攻服着てほしいそうで…。どうしますか?」
「嘘でしょ…あれ着る気ないから、制服にしたのに…。今行くー。」
お嬢は葵の方へ走っていった。
「若狭、ありがとね。」もう一度そう言い残して。