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「優斗おぼっちゃま。お迎えにあがりました。」

迎えなんて、いらねぇっつぅの。
ピカピカのリムジンと運転手の中野(なかの)を見ながら俺、花房は、内心毒づく。

「今日は、旦那様がお帰りになられております。お食事を共にしたいと申しておりました。」

中野は扉を開けながら、そう言った。

「…そうか。わかった。」

「ところで、ぼっちゃま。奥様がおっしゃっておられましたが、いつまでこんな『遊び』をなさるつもりですか?」

この『遊び』とは情報屋での仕事のことを指す。
『perfect crime』という組織は初代リーダーの御曹司が暇つぶしで作った組織だから、うちのおふくろにはそう見えるのだろう。
もちろん、有意義な情報を家に回さない俺も悪いのだろうが…。

俺は中野の言葉を無視して、リムジンに乗り込んだ。
中野のついたため息は大袈裟に大きく聞こえた。