花房くんに連れられて、私たちはカフェ『Olive』に入る。
神楽さんとこの間の双子は窓際の一番奥の席に座っていた。

「遅かったね。」

神楽さんは笑顔で言う。
この笑顔、なんとなく読めなくて苦手かも。

「それに、なんで詩織ちゃん、そんなに濡れてるの?」

聞かれたくないことをズバリと聞いてくる神楽さん。
隣の双子は私を見てクスクスと笑う。

「色々ありまして…。」

私は笑われてることにイラッときたが、なんとか我慢し頭をかきながら笑う。

「…それで、何の用事ですか?」

私は話を変えようと聞いた。

「あー、そうそう。頼みたいことがあってさ。
この双子…名前は『六園雷』と『六園風』っていうんだけどさ。
この2人がトップに立つ暴走族『Winder』の一日リーダーを3人でしてほしいんだ。」

その瞬間、時は止まった。

「…あの、聞いてないんですけど。」

花房くんが言う。

「先に言っとくのは面白くないと思ったからさ。秘密にしといてみた。」

舌を出して言う神楽さんは、子供のようだった。

「急に言われても面白くないですって…。」

花房くんはげんなりしている。いつものことなのだろうか。

「ごめんごめん。じゃ、残りはこちらの風雷コンビが話してくれるから。俺は黙っとくね。」

「…めんどくせーんだけど。椿が何から何まで説明してくれるって言ったじゃねぇかよ。」

「こら、雷…すみません。」

前にも見たことがあるような光景。
この双子、性格の差がはっきりしてるな。

「えっと、初めまして。高二で『七桜組』の一人娘、
『七桜詩織』です。」

任務のことよりまずお互いのことを知るのが大事だと思い、私は名乗った。
大袈裟なほど大きなため息を雷くんはつく。

「さっき椿が言った通りだよ。俺が雷で、こっちが風。高一。一応暴走族でいうならこの街一の『Winder』のトップ。」

「よろしくお願いします。」

風くんは礼儀正しいって感じ、雷くんは気性が荒いって感じなのかな?
にしても見分けがつかない。

「2人ってほんとにそっくりだね。」

私が聞く。

「全然似てない。」

2人の声はキッチリと重なった。

ふふっと椿さんが笑った。