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疲れた…。

放課後になった。現在トイレの個室で一人。
今日一日を振り返りながら、ため息をついた。

一限が終わった後もほんとに大変だった。
葵にも花房くんにも、ぐいぐいこられて、女子からの目線は冷ややかで…。

たしかに、二人に何かされるのはドキドキする。
でも、葵とは今までの関係のままでいたかったという思い、花房くんとは仕事の付き合いもあるし、あんまりそういう関係になりたくないという思いから、あんまりそういうことはして欲しくないといいますか…。
単純に私よりも可愛い子や一途に思ってくれる子の方が彼らにとってもいいといいますか…。

というか、トイレで長居してる暇なんてなかったんだった。
花房くんと葵と若狭を校門に待たせてある。

急がないと。

そう思ったときだった。

気配もなく、バシャッという音と共に、私の頭上から水が降ってきた。咄嗟の判断で少し身を後ろに引いたが間に合わない。頭から水をかぶることになる。
トイレから駆け足で出て行く足音と共にプラスチックが床に転げ落ちる音がする。

葵か花房くんのファン…かな?

こんなときにはいたって冷静な私の脳味噌。
これで水をかけられるのは…8回目、かな?

葵といると何かとこういう陰湿な絡まれ方をされる。
それでも葵と一緒にいたのは葵のことが、好きだったから…。それに、葵が一緒にいたいと何度も昔から言ってくれたから。
その言葉は、私のことを"友達"としていたいという意味だと思っていたのだが。多分そういうことではないのだろう。

…違う。そんなことを考えている暇じゃない。
急がないと。

私はビショビショの体のまま、トイレを出た。
幸い制服は黒なので透けない。

車にタオルがあるだろうから、大丈夫。
ポタポタと水が床を打つ。

廊下を水浸しにしていることを申し訳ないと思いつつ、私は校門まで走った。