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今日は色々あったけど…。
とりあえず、『perfect crime』に所属することになったことが、一番人生に響きそうだなぁ…。
昔からよく命狙われてたし、今更その機会が増えたからなんだって話だけど。
私、出来るだけそういう機会から離れたいんですけど?
まぁ、そこまで長い間所属することないでしょうけど…。

それに、今日はなんだか、花房くんが変だった。
いや、彼とは出会って二日だし、ほんとはそういう人なのかもしれないけど…。
それでもびっくりしたのはホントだし…。

なんか、葵も変だったなぁ。花房くんと話したいだなんてさ。いつの間にそんな仲良くなったんだろ?

そのとき、私の頭に花房くんの言葉がフラッシュバックする。

『可愛い。』

だめだ。思い出したら、恥ずかしい。早く寝よ。
フカフカのパジャマとお布団に包まれて私は頑張って寝ようとする。真っ暗だと眠れない私の枕元にあるランプシェードがぼんやりと光っていた。

何が、可愛いだ。
何も企んでないと彼は言っていたけど、何か企んでるに違いない!

あぁ!もう!考えれば考えるほど眠れない。
それでも無理やり寝ようと寝返りを打つ。
私の部屋の扉がノックされたのは、ちょうどそのときだった。

「お嬢、夜分にすみません。」

声だけでわかる。葵だ。
ホント、こんな夜遅くにどうしたんだろ?
一応、私もレディなんですけど?

「…って、寝てますよね。入りますよ。」

ガチャッと音を立てて開く扉。
私は咄嗟に寝たふりをする。

葵は私のことを見て、「やっぱり寝てる」と言った後、

「お嬢に言いたいことがあって来たんです。
…言おうかどうしようか迷っていたらこんな時間になってしまいました。
寝ててもいいです。聞いておいてください。

僕は、お嬢のことが好きです。花房さんよりも。
だから、僕のものでいてくださいね。」

そのあと、葵の吐息が近くに来て、耳に違和感が走る。
それは甘い電流のようで初めての感覚だった。

「それでは、お休みなさい。」

そう言い残して、葵は私の部屋から去っていった。
耳の違和感。それが、耳にキスされたのだと気付いたのは、葵が出て行って少ししてからだった。

え?葵が私のことを好き?それでいて、花房くんも私のことが好き?

動揺している脳味噌と、ドッドッドとうるさい心臓。

葵、私のことそんなふうに思ってたの?

…その夜、私は何も分からなくて一睡も出来なかった。