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花房くん、絶対何か企んでるよ…。

放課後になったから、それについて問い詰めたかったけど、帰りの車がもう校門に来ているらしい。
目立ちたくないし、しょうがない。早く行こ。

葵に声をかけ、私は歩き出した、が。

「…お嬢、今日、アイツに何言われたんですか?」

「え?」

私は足を止めた。

「あー、花房くん?
…なんか、私のこと急に可愛いなんて言ってきた。
絶対何か企んでるよ。」

私はなんの気無しにそう言った。
だから、葵が、

「…へぇ。」

黒い笑みを浮かべるなんて思わなかった。

「…どうしたの?葵?」

私は心配になって聞く。
すると葵は今度は優しくこちらに微笑みかけ、

「お嬢には関係ないことですよ。」

私の頭を撫でた。
もう!ちょっとそっちのが大きいってだけで子供扱い?

「早く行こ!」

私は葵の手を振り解き、歩き出す。

「…お嬢は、詩織は、俺のですから、ね?」

葵の呟きは私の耳には届かなかった。