次の日になって学校が始まり、委員会決めが進む。
でも、私は落ち着かない。さっきからずっとチラチラ花房くんの方を見ていた。

…なんで昨日キッパリ断らなかったんだろ?

私、七桜詩織。猛省中です。
情報屋?避けたいんですけど。

…でも、お父さんに相談したら、やれって感じだったし。お母さんも、経験は大事って今朝言ってたし。
避けられないのかなぁ?

思わず漏れるため息。

「おい!七桜!」

そんな私のため息を見逃さなかったハゲゴリラがチョークで黒板をコツコツ鳴らしながら私の名を呼ぶ。

「お前、いいか?」

「え?……いいですよ?」

何も聞いてなかった私は、ただ返事をする。
その途端、先ほどからずっと頬杖をついていた花房くんの方から、クククッと笑い声が聞こえた。

「じゃあ、委員長は七桜で。」

パチパチとなる拍手。昨日の自己紹介の時よりもその音は大きい。皆委員長したくなかったのだろう。

…え、嘘でしょ?委員長決めしてたの?で、私が委員長?え?飯田さんじゃないの?

飯田さんの席の方を見ると空席だった。彼女は今日休みだ。

…最悪。

げんなりしつつも黒板を見ると副委員長は先に決まっていたようで、花房くんがやることになっていた。

「よろしく、七桜?」

隣の花房くんが声をかけてくる。
まるで昨日、何もなかったかのような雰囲気の優等生感漂う花房くん。

「…よろしくしたくないけど、よろしく。」

私は思ったことを口にした。精一杯嫌な顔をしながら。
すると、花房くんは私の方に近づき、耳貸してと言う。
言われるがまま私は、花房くんに耳を貸す。

「…七桜。顔にも口にもすぐ感情が出るんだね。可愛い。」

耳元に囁く花房くん。

…ん?

一瞬今起きたことが理解できなかった私。

何で急にこの人こんなに積極的なの?
昨日はそんなじゃなかったのに。てか、出会ってすぐだよ、私たち?

『冷静な私』はそう思うが、『16歳の私』は気が動転しまくっており、顔もぼんっと音を立てて赤くなっている。

どうしたの?花房くん。急に可愛いだなんて…。

私は男性からこういうことを言われることなんてないから初めての経験でドキドキした。

そんな私を見て、花房くんはクククッと笑う。

「perfect crime、入りなよ。俺、楽しみにしてるから。」

と残し私の耳元から離れた。

ここで『冷静な私』と『16歳の私』の思考は交差する。

何か企んでいるに違いない…と。