大学を出て駅と反対方向に暫く歩くと自然公園のような広い場所に出た。
「こっち側に来るの初めてです」
「荒木くんは実家暮らし?」
「うん、竹中くんは?」
「僕は下宿。榊さんと一緒のところ」
寮的な、と言われて納得する。あんな人が常日頃から傍にいたら色々と大変そうだな。
というかいきなり外に出ても何を撮影すればいいのか分からないな。
「荒木くんって瀬川さんと同じ学部学科なんだってね。仲良いの?」
「え、いや。話したことない」
「そうなんだ。実は僕もないんだよね」
「え?」
でも一回生の最初からサークルに入っていたら数回くらいはあるんじゃないだろうか。瀬川さんはよくサークルに顔を出すみたいだし。
「なんか、壁? みたいなの感じてさ、話しかけても無視されそうで怖いんだよね」
「……」
「瀬川さんの声、榊さんに話しているときしか聞いたことない」
目線を前に向けるとカメラで風景を撮影しながら並んで語り合っている榊さんと瀬川さんの姿が見えた。
微笑んでいる榊さんに対して真顔の瀬川さん。しかし仲睦まじい様子が伝わってくる空気感に何も言えなくなった。
「付き合ってるのかな、あの二人」
「え!?」
「えって、そんなに驚く?」
声を上げたのに驚いた竹中くんに首を横に振る。そっか、付き合っている、のか。
そういえば今頻繁に活動しているのってあの二人だけだって榊さん言っていたっけ?
「(もしかして、入っちゃ駄目なタイミングでサークルに入部してしまった?)」
やっぱり、変な下心で入部なんか決めなければよかった。