「お疲れ、天。今ちょっと立て込んでてね」
「……」
「こちら新しいサークル仲間の荒木くん。天と同じ二回生で、そういえば学部どこ?」
榊さんの質問に「心理学部」と答えると彼はあれと首を傾げた。
「確か天も心理学部じゃなかった?」
「というより……」
「ん?」
部屋に入ってきた彼女に視線を向けるが、何故か目を反らされてしまう。
「瀬川さん、だよね。同じ学科の」
「……誰」
低く呟かれた言葉が針のように心臓に刺さった。確かに話したことは一度もないけど、でも数回同じ講義を受けたことがある。
そんな目立つように発言していたわけでもないし、覚えてなくて当然か。
瀬川さんは「パソコン借りますね」とノートPCが置かれている席に座る。
そして鞄の中から一台の一眼レフを取り出した。
瀬川さんも写真サークルに入っていたのか。
「まあこんな感じで、基本的に活動してるのは俺と天だけ。だから荒木くんもいつでも来てくれていいから。ちなみに今天が使ってるPCは元々俺ので写真の加工ソフトとか色々入ってるから勝手に使って」
「はあ、分かりました」
想像していたよりも緩いサークルなんだな。公認っていうから頻繁に活動しているものだと思っていた。
でもいきなりそんなんじゃハードルも高いか。それに榊さんもいい人そうだし、これでよかったかもしれない。