気にしなくてもいいのに、気になってしまう。自分が撮った写真なのに他の人に横取りされて、それが評価されている時の煮え滾るような怒りも。
あの時、僕は何も分かっていなかった。彼女は自分と同じような人間だと勘違いして、分かった気になっていた。
見失いたくない、自分の気持ちを。
もう、手放したくないから。
「荒木くんがあの写真のこと、私のだって分かってくれて良かった」
「僕は、何も……」
「それでも、ありがとう」
微かに微笑んだ瀬川さんに数年に渡って抱えていた重荷が降りた気がした。
あぁ、瀬川さんは……
「(強いな……)」
芯がしっかりしている。例え日が当たらなくても、彼女はスッと何事もなく立っているだろう。
ありのままの君だから、だから強く惹かれた。
僕も、君のような人になれるだろうか。
「……やっぱり、続けててよかったな」
「え?」
彼女がボソリと呟いた言葉に首を傾げる。すると瀬川さんは「ううん」と首を横に振った。
「この間、あの写真に映ってた女の子に会った。凄く久しぶりに」
「……うん」