「どうして……」

「……うん」


僕たちの距離に沈黙が落ちる。僕がサークルに行かなくなってから、瀬川さんはどうしていたんだろう。
写真を撮ることを辞めると言っていた彼女。そんな彼女が今でも撮ることを辞めずに、ましてや写真の個展まで開くことになった経緯、続けることになったきっかけが自分の知らない期間に存在している。

そのことに嫉妬するなんて、きっと烏滸がましい。

「少しだけカメラとは距離を置いたよ。SNSも消したし……今まで撮ったやつは、消せなかったけど」

「……」

「だけど、通学路とか一人で散歩してる時とか、『あー、この瞬間切り取りたい』ってタイミングで勿体無いって思うようになって……」


あぁ、その感覚は……見覚えがある。
就活で忙しい時、長い間一眼レフに触れられなくて同じような思いをしたことがある。やはりスマホのカメラと一眼レフじゃ、解像度も映りも違ってくるから。

この一瞬はこの瞬間にしかないのに、それをカメラに収められないのは勿体無い気持ちがして。


「久しぶりに写真を撮ったら、一番ってほどじゃないけど『好きだな』ってのが撮れた」

「……うん」

「……勝手に、あの写真を超えたいって自分に呪いを掛けてたのかもしれない。本当はそういう気持ちを大切にしたかったのに」


うん、分かるよ。評価されたいという承認欲求が好きを超えてしまう時がある。
大学を卒業して祖母が亡くなり、SNSを始めてからその気持ちが分かるようになった。人の目に付くところに公開すると、嫌にでも評価が付き纏ってくる。

前上げた投稿の方がいいねの数が多かったとか、コメントが多かったとか。