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冷たい風を切って走る。外の空気に触れたところから体温が奪われる。しかし、身体の底から込み上げてくる煮えたぎるように熱いものは怒りか、それとも彼女への気持ちの昂ぶりなのか。
今、目を閉じてもあの時のことが鮮明に蘇る。
目に映る夕焼けが、僕の心を焦がす。
形のない理由が、僕の胸を締め付ける。
その瞬間、僕は君に恋をした。
「(僕は、瀬川さんのことが……)」
あの写真を撮った君のことが、ずっと好きだった。
君でよかった。
「……瀬川さん」
部室を飛び出し、どこに向かえばいいのかも分からずに脚を走らせているといつの間にかサークルに入った当初に訪れた公園に辿り着いていた。
雪が降る中、公園のベンチに一人座り込んでいる瀬川さんの姿が視界に入った。
どことなく哀愁を漂わせる彼女に追いかけてきたはいいものの、何と声を掛けていいか分からず立ち止まってしまう。
だけどこのままじゃ駄目だと自分を強く奮い立たせると驚かせないようにゆっくりとベンチに近付いた。
「瀬川さん」
「っ……」

