と、
「こんにちはー」
突然開いた部室の扉。いつものように榊さんへの挨拶だと思い目を向けるとそこには派手な茶髪の女性が顔を覗かせていた。
が、その瞬間に部室内の空気が外の気温に負けないくらいに下がった。
「あれ、もしかして今からみんな帰る感じ~?」
「……立川」
彼女を見て榊さんの発した名前に意識が持っていかれる。
立川、立川妃乃。
「(この人が……)」
一目見て心を奪われた、あの作品を撮影した張本人。
写真は撮る人の心を映すもので、その人がこれまで通ってきた人生や日々の暮らし、性格が映し出されるものだと思ってきた。
だからあの美しい写真を撮る人は綺麗で儚くて、そして……
そして……
「あれ、知らない子がいるー。僕だれ~?」
「っ……」
立川さんの目がこちらを向く。大きな茶色の瞳の中に自分の顔が映し出され、憧れの人に見つめられていることを遅れて理解した。
この人が立花妃乃さん。想像の中の人よりもずっと美人で、そして思っていたよりも派手な女性だ。
もっと、自分に似て静かな人だと思っていた。