今から榊さん含めた四回生は少なくなると不安になるな。
すると瀬川さんは椅子から立ち上がると荷物を纏め始めた。
「あれ、天出るの?」
「うん、中にいても何も撮れないし、外のイルミネーションでも撮ってくる」
「え、その格好で行くの? 寒くない?」
榊さんの言うように彼女の服装は今の外の気温と合っていないようにも思える。
彼は立ち上がると彼女の前に立ち、その首に自身の紺のマフラーを巻き始めた。
「いいって。それに私もう今年中来ないから返すタイミングない」
「年末親戚同士集まるだろ。その時返してもらえたらいいから」
「ちょっと、荒木くんの前でそういうこと言うのやめて」
もう二人が従兄妹同士なのは知っているから今知ったところで変わりはないんだけど。
榊さんのマフラーを首に巻く瀬川さんの頬が恥ずかしさからか赤く染まった。
「……」
榊さんは人を気遣うのは上手だけど、自身に向けられる好意に関しては鈍感なんだな。
そのことに気付いて以来、このサークルでの自分の立ち位置を見失いかけている。