それじゃあまたなーとまるで嵐のように去っていった榊さんに呆気に取られる。いい人なんだろうけれどいつまで経っても距離感が掴めない人だ。
戸惑いを隠せないでいる友人二人に向かって、「ごめん」と自然に謝罪の言葉が飛び出した。
「いや、いいけどよ。というかあの人と本当に知り合いかよ。俺たちとはまるで生きてる世界が違うぞ」
「なんかいい匂いしたよな。イケメンって匂いもいいのか」
それぞれ別の感想を漏らす武文と秋生。何故だか榊さんと知り合いだとバレてしまっていることが恥ずかしい。
なんか授業参観に来た母親がでしゃばっているのを友人に見られてしまったような気分だ。
「てかさー、無駄に距離近かったけどあの人とお前、付き合ってんの?」
「……は、」
「分かる。いや、俺たちは応援するけど」
何故そんな話に、いや榊さんがむっだにべたべたしてくるからだ。
「ち、違う。僕は榊さんじゃなくて」
「「じゃなくて?」」
「っ……」
あぁ、もう全部あの人のせいだ。