どう足掻いてもレンズに映る画角というものは定まっている。
遠くからでも焦点距離が長ければ被写体に近付けるけれど、その分画角は狭くなる。

映したいものを大きくするには自分自身がそれに近付かなければならない。

きっと僕はまだ、レンズを通してじゃないと彼女のことを見ることは出来ない。


「あー、帰省面倒くさいな」

「秋生って地元九州だっけ?」

「そう、最後の講義が終わったらそのまま空港行く」


お昼下がりに大学内のカフェで休憩を取りながら秋生の帰省の苦労話を聞く。
本格的に年末が近づいてきたこともあり、閑散としたきたため、普段は脚を運ばない洒落たカフェにも三人で訪れることが出来た。


「麗はサークルで集まりとかないの?」

「自由参加らしいから。多分行っても浮くだけだと思う。あと帰省するなら秋生、実家の住所教えてほしい。年賀状送りたいから」

「年賀状か。いつも送ってるのか」

「いや、今年は……」


送ると言っても二人の他に出す予定の人はいないけれど。