微笑んでいる榊さんの言葉に「え?」とスマホの画面から顔を上げた。
榊さんがカメラを教えた? だけど瀬川さんがカメラを始めたのは高校からだと言っていたし。

二人は高校の頃からの付き合いなのだろうか。


「瀬川さんって榊さんと同じ高校だったんですか?」

「ん? いや、違うけど」

「……」


どういうことだ?と頭を傾げていると言いたいことを察したのか、彼は「ああ」と納得したように微笑んだ。


「まあ、色々とね。ここだけの話、俺と天は従兄妹なんだよ」

「いとこ?」

「そう、俺の父親と天の母親が兄弟。だから苗字は違うんだ。俺が写真サークルの代表やってるって聞いてうちの大学に入ってきたわけ」

「そうだったんですか……」


だから瀬川さんの態度が榊さんだけ違ったのか。ということは竹中くんが言っていたように二人が付き合っているという事実はないのかもしれない。


「一応身内だから甘くなっちゃうんだけど、俺も来年はいないからさ。天にはもっと人と関わりを持ってほしいなって思ってたから、このタイミングで荒木くんが入ってきてくれて嬉しいよ」

「……何も出来てませんけど」

「うーん、天は人見知りだからなあ」


人見知りと言うけれど学部では普通にカースト上位のグループに所属していた。きっと榊さんはサークル内での瀬川さんのことしか知らないのだろう。