その日は瀬川さんよりも先に管理室に鍵を受け取りにいくことで瀬川さんに迷惑を掛けずに済んだ。
部室にやってきた瀬川さんに話を聞くとどうやらスマホを家に忘れて榊さんからの連絡を受けられなかったようだ。
「そう、それで最後に露出量を絞るといい感じにぼけてくれる」
榊さんの指示に従って加工ソフトの露出量を調節すると撮影した写真が見違えるほど味のある写真へと変化した。
一度も加工ソフトを触ったことないことを相談すると実際に隣で教えてくれるというので、講義終わりに部室に寄った。
途中、瀬川さんが入ってきたが荷物だけ置くと一眼を手にしてどこかへ出かけてしまったけれど。
「なんか、自分が撮った写真じゃないみたいです」
「加工で結構変わるからなー。やりすぎると加工してるってバレるからあんまり勧めないけど。一番映えるのは自然光なんだけど、ここ最近ずっと曇りだったし」
「なるほど」
「今スマホのアプリでもいいのあるよ。今招待送ってあげる」
そう言って隣の席でスマホを触る榊さんの横顔を眺める。
榊さんとは結構な頻度で会う仲になったけれど、本当に裏表のない良い人だと思う。