テーブルの上に置かれていたスマホが震え、確認すると榊さんから個人で連絡が来ていた。


【今日はゼミが長引きそうだからサークルに顔を出すなら鍵を忘れないように】


榊さん、四回生で暇しているって聞いてたけどちゃんとゼミには顔を出しているんだな。
分かりました、と返事を送ると瞬時に既読が付き、そしてもう一通送られてくる。


【あと天から既読が付かないから見掛けたら声を掛けといてくれないか?】


え、その文章を見た瞬間、後ろを振り返る。声を掛けろと言われても。
瀬川さんの周りには大勢の女子生徒が座っている。それも学部でも特に派手なグループだ。

そうだ、前から瀬川さんは所謂スクールカースト上位のグループに属していて話しかけづらい雰囲気があったのだ。
この一ヵ月の間にサークルの中では少しずつ会話も増え、世間話を出来るまでの仲になったが、サークルの外で話しかけたことは一度もなかった。

積極的に話している雰囲気はなかったが、それでもグループに馴染んで見える瀬川さんに声を掛けるのはハードルが高い。


「(こうして見ると違う世界にいるみたいだ……)」


きっと見ている世界も違うんだろうな。