一緒に暮らしていた祖父がこの世を去って一週間。
漸く落ち着きを見せ始めた我が家では祖父の部屋を掃除し、遺品を纏めていた。
祖母に駆り出され、彼の部屋を掃除しているとベッドの下を掃除しようとしたときになにやら堅い箱が指先に触れた。
「麗、何かあったかい?」
「……これ」
ベッド下から取り出した箱を祖母に見せる。すると彼女は懐かしそうに目を細めた。
「おやおや、これはカメラだねえ」
「カメラ?」
「ああ見えて写真を撮るのが好きだったんだよ。最近使っているところを見掛けないと思っていたらこんなところに置き去りにしていたのか」
「……」
箱の中に手を突っ込むと、重量感のある鉄の塊が姿を現した。形や大きさを見るに一丸レフだろう。
掛けている眼鏡のフレームを持ち上げ、電源を入れてみるがバッテリーが切れているのか、反応はなかった。
「これ、充電したらまだ使えるかな?」
「なんだい、興味があるのかい?」
「……」
写真、そう耳にして頭を過ったのは大学で見たあの写真だった。
一度見ただけで目が離せなくなった、心に深く刻み込まれた夕焼けの赤。
それを初めて見た時、写真というものに深く興味を持った。
「なら、それは麗が持っているといい」
「いいの?」
「おさがりを使ってくれた方があの人だって喜ぶさ」
亡くなった祖父から譲り受けた一眼レフをゆっくりと持ち上げてみる。
この日、僕は初めて自分のカメラというものを手にした。