朝だ。窓を開けて、気持ちの良い風を感じ、一日の始まりを悟る。なんて言うオシャレな朝なんかではない、私の場合は。朝の寒さを感じ、布団の中でうずくまり、二度寝をする。それを繰り返す。そして、やっと時間が過ぎている事に気付き、狭い部屋の中を走り回りながら学校に行く準備をする。これが、私の朝のルーティーンだ。
「 も~!ママ!!もうちょっと早く起こしてよ~!遅刻じゃん!」
「 何度も起こして、起きなかったのは結奈でしょ?」
「 はいはい。行ってきまーす。」
「 いってらしゃーい!飛ばしたらダメよー!!」
と、言われるけど、遅刻だから飛ばすよ!と思う。
「 行ってきまーす!」
 自転車の籠に荷物を入れ、自転車に乗り、坂道を下る。そして、やっと学校に着く。チャイムと同時に自分の席に座り、ギリギリセーフ!と荒い呼吸を落ち着かせながら、腕時計を見る。すると、後ろから
「 おはよー、ゆー坊。相変わらず遅刻ギリギリだね。」
と、師匠と同じように呼び、ニヤニヤしながら私の事を馬鹿にしてくる人は一人しかいない…
「 朝から、うるさいな~。イイ太郎。」
と、後ろを向く。そこには、本当にいるんだと思えるほどの丸メガネをかけ、第一ボタンまでしっかり留め、ネクタイもきっちりとしていて、サラリーマンか!と、突っ込みたくなるような人がいる。その人は、井伊 太郎。このクラスのクラス委員長。入学式の日にすぐに決まった。多分、その見た目で。そして、私の唯一の男友達。一番の。中学から、ずっと同じクラスで、ずっと出席番号が一番と二番の関係。だから、いつの間にか、お互いに心を開き、お互いの心の中で、一番の男友達と女友達になった。