春樹はムッと唇を尖らせて隣りの幸祐を睨む。


幸祐はニヤニヤとしたいやらしい笑みを浮かべて「それ、食うのか?」と、聞いてきた。


「せっかく持ってきてくれたんだ。食べるに決まってるだろ」


ぶっきらぼうに答える春樹。


「へぇ~? ふぅ~ん? 依頼は断るのに食うんだ?」


その言葉に、再び草だんごへ伸ばしかけた手が止まる。


忌々しいものを見るように幸祐を睨む春樹。


しかし、今回は立場が悪い。


依頼を受けるのはめんどうだが、目の前の草だんごはなにがあっても食べたい。


口の中に唾が溜まっていき、またゴクリと喉がなった。


さっきから草だんごのいい香りと、あんこのほどよい甘い香りが部屋中に充満している。


もうこれ以上我慢はできなさそうだった。


「わかった、引き受ける」


春樹は短くそう言うと、草だんごにようやくありつけたのだった。