「聞く話では遊女たちの様子もおかしいらしいです。食べ物を用意しても飲まず食わずで客を取ったり、高級遊女の太夫らが格安で客の相手をするようになったり」


「それは店側の問題じゃないのか」


ようやく春樹が質問をした。


「どうやら違うみたいです。太夫本人がどんな金額でもいいからと申し出たようです」


萩野の言葉に春樹は黙り込んだ。


なにか考え込んでいる様子だ。


やがて顔を上げ「金は」と、短く言った。


一瞬なにを言われているのか理解できなかった萩野は瞬きをする。


そっと幸祐が近付いて「お代金のことだよ」と、耳打ちをした。


萩野ははっとしたように袖の下から茶色の巾着を取り出した。


それをひっくり返すと中から小銭がジャラジャラ出てくる。


それを見た春樹は一瞬で興味を失ったようで、萩野から視線をそらせた。


「今、持ち合わせはこれしかなくて……」


「帰ってくれ」


つんと冷たく言い放たれて萩野は肩を落とす。


「おいおい、それはねぇだろ!?」


春樹の肩を叩いたのは幸祐だった。


春樹はうっとおしそうに幸祐を見上げる。