「それで、その八重子さんを助け出すために俺の幼馴染が遊郭へ行ったんです。俺は止めたんですけど、言うことを聞かなくて……」


グッタリとうなだれる萩野。


「事情はわかった」


春樹の言葉に萩野が勢いよく顔を上げる。


「でも、それは俺の専門じゃない」


次の瞬間キッパリと言い切られて萩野の目から輝きが消える。


一筋の光が一瞬にして消えていった。


そんな、絶望的な雰囲気が広がっていく。


「それが、そうでもないみたいなんだよ」


口を挟んだのは幸祐だった。


さっきまでとは違い、真剣な表情をしている。


春樹が視線を幸祐へと移動させた。


「その遊郭、ここ数ヶ月間なにかがおかしいらしい。客として出入りしていた男が一晩で廃人みたいになって出てきて、有り金全部使っちまったのかと思って聞いてみても、どうやらそうでもないみたいなんだ。じゃあどうしてそんな真っ青なのか聞いても何も答えない。それなのに遊郭へは毎日のように通うようになったんだと」


春樹は黙って幸祐の話を聞いていた。