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萩野のいうことは好だった。


萩野には三重野規子という幼馴染がいる。


その幼馴染が一週間ほど前に遊郭へ行ったきり出てこないのだ。


「仕事をしてるんだろ」


春樹が興味なさそうに答える。


萩野は一生懸命左右に首を振り「そうじゃありません! 規子は遊女になった友達を助けるために行ったんです! それなのに戻ってこなくて、それ所かあいつ、遊女に……」と、言葉を詰まらせながら一生懸命説明する。


なんでも、今からひと月ほど前に荒咲八重子という女が女衒(ぜげん)と呼ばれるいわば人身売買の男たちに連れ去られ、遊郭に売り飛ばされてしまったらしい。


「遊郭で働くにもそれなりの理由があるだろう」


春樹は表情を変えずに言う。


「女街の言う話だと、八重子の両親には借金があったとか。でも、それも本当かどうかわからないんです、八重子の両親は半年前に不慮の事故で死んでしまったから……」


「ぜ~ったいに嘘だね! その、親の借金ってやつ! おおかた八重子さんがひとりになったのをいいことに、嘘を吹き込んで遊女にしちまったんだ!」


部屋の隅に立って話しを聞いていた幸祐がダンダンと足踏みをして叫ぶ。


春樹は幸祐を睨んだ。