「金は」


「え? あぁ、金か……聞いてない」


「金がないなら帰ってもらえ」


「なんでだよ、話しくらい聞いてやったらいいだろ? ロウソクひとつで暮らすくらい貧乏なんだからよ!」


幸祐の言葉に男の眉がピクリと動いた。


その時、男の視界に玄関前に立っている見知らぬ男の姿をとらえた。


相手は16歳くらいか、悪くない顔をしているのに、眉は自信なさそうに下がり、猫背で姿勢が悪いせいでやけに幸薄そうな雰囲気をまとっている。


「あいつは誰だ」


「あぁ、依頼人の萩野さんだよ」


幸祐が手招きすると萩野という男は怯えながら部屋の中へ入ってきた。


「あ、あの……」


「萩野さん! こいつがさっき俺の言った陰陽師に安陪春樹だ!」


幸祐は自信たっぷりにそう言うと馴れ馴れしく男の肩を叩いた。


春樹と呼ばれた男は一瞬しかめっ面をする。


「は、はじめまして! あなたは自称陰陽師の春樹さんですか!?」


萩野はすがりつくようにして春樹に近づき、その前で正座をした。


その勢いにさすがの春樹も驚いて目を見張る。


「お願いします! 俺の幼馴染を助けてください!!」


萩野はそう言い、額を床に押し付けるようにして頭を下げたのだった。