「幸祐、それは」


「ん? あぁ、そうだった! さっき萩野さんからもらった土産だ」


体を起こした幸祐は袖の下から同じ丸いものをころころと4つ取り出した。


茶色と、べっ甲色をした2色ある。


それを見た春樹の喉がゴクンとなった。


音が聞こえた幸祐が「ははっ」と笑う。


「本当に春樹は甘いものに目がねぇなぁ」


そう言っているそばから春樹は丸いものを一つ手に取った。


丸いものの表面はゴムで覆われていて、春樹はそれを張りでツンとついて割った。


途端にゴムがつるりと向けて中から甘い香りが漂ってくる。


春樹はそれを指先でつまむと口に放り込んだ。


つるりとした心地いい舌ざわり。


噛むとやわらかく、少しざらつく面が姿を見せる。


そして一気に甘味が広がっていく。


「多摩島屋の羊羹だよ。どうだ?」