「よっ! 後日談持ってきたぜ!」


遠慮なくズカズカと上がり込んでくるのはもちろん幸祐だ。


春樹は少しだけ眉間にシワを寄せる。


「規子ちゃんの友達の話、覚えてるか?」


聞かれて頷いた。


八重子という娘が嘘か本当かわからない親の借金のために遊郭へ売られたのだ。


今回の事件の発端はそこだった。


「女衒(ぜげん)どもに訊ねたら、やっぱり親の借金なんてなかったんだとよ。八重子は街でも有名な美人でさ、どうにか遊郭に連れてくることができねぇか、楼主がずっと考えてたらしい。そんなときに都合よく両親が死んで、借金の話をでっちあげて連れてきたってわけだ。他にも調べてみると、出てくる出てくる。あの遊郭で働く女の半数以上が騙されて連れて来られたり、誘拐された被害者だった」


幸祐はまずいものでも食わされたようにしかめっ面でことの顛末を伝えた。


「あ~あ、嫌な世の中になったもんだなぁ」


そう言ってごろんと横になった幸祐の袖の下からなにかがコロンと転がり出た。


手のひらに乗るくらいの茶色いソレを目にした瞬間、春樹の顔色が変わった。