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「戦いに負けるからって途中で逃げるなんて、男じゃねぇなぁ!」


2人で山を下りながら幸祐はブツブツと文句を言う。


亜乱が戦いを途中放棄したことがどうしても許せないのだ。


「負けたのは俺のほうだったかもしれない」


隣りと歩く春樹がぽつりと言うので幸祐は首をかしげた。


「なんでだよ。あいつだって、春樹の方が力があるみたいなこと言ってたじゃねぇか」


「実際には五分五分だ」


「へ、そうなのか?」


「あぁ」


「それなら別に逃げなくてよかったのになー?」


ますますわからなくて幸祐は更に首をかしげる。


「いずれにしても、あいつとはまた会うことになるだろうな」


「幼馴染なんだから、そりゃそうだろうけどさ!」


あっけらかんと答える幸祐に、春樹はもうなにも言わなかったのだった。