男の冷酷な言葉も屈指ず、幸祐は男の目の前に座り込んだ。


「なぁ頼むよ！　助けてやってくれよ！」


突然両腕を掴まれてそう言われても、男にはなんのことかさっぱりわからない。


わからいものを引き受けるわけにはいかないというように男は簡潔にひとこと「断る」と告げる。


その瞬間幸祐がまた泣きだしてしまいそうな顔になった。


コロコロと表情が変化するので見ていて飽きない。


しかし男はまた和紙を人形に切り始めた。


もう話すことはないとでもいうように、さっきよりも時間をかけて、丁寧に切っていく。


その指先は長く白く、とても美しい。


ほーっと、幸祐まで関心した声を出してしまった。


が、次の瞬間幸祐は自分の役目を思い出したようにはっとした表情になり「そじゃなくてよ！　依頼人なんだよ！」と、再び男の腕を掴む。


作業中に腕を掴まれたことで和紙の形がいびつになり、男は幸祐をにらみつけた。


ぎろりという擬音が聞こえてきそうなまなざしに幸祐はひるんだ。