自分にはなにもできないけれど、応援くらいならできると思いいたったのだろう。


その声に春樹がハッとしたように目を見開き、それから「お前に言われなくてもわかってる」と、いつもの冷たい声で返事をし、印を刻む右手に左手をあてがった。


今度は両手で丁寧に印を作っていく。


「臨!兵!闘!者!皆!陣!烈!在!前!」


はっきりとした発音で、ひとつひとつで印を変えて結ぶ。


「邪気退散!」


春樹が両手を前に突き出した瞬間、式神がボッと炎に包まれた。


幸祐はハッと息を飲む。


オレンジ色に輝く式神は鬼の力を封じ込めるように前へ前へと体を進める。


鬼はあからさまにひるんでいた。


さきほどまでの威厳ある表情は一変して恐怖に変わり、式神が近付いた分だけ後退していく。


「これで終わりだ」