「春樹、こいつ誰なんだよ」


「残念ながら俺の知り合いだ」


短く答えた春樹に男はくすっと笑って「幼馴染なんですよ、私たち」と答えた。


「幼馴染?」


この冷たい男と春樹が幼馴染だなんて、信じられなかった。


春樹も態度は冷たいけれど、この男のように心の底から冷たさを感じるようなことはない。


「申し遅れました。私、天魔亜乱と申します」


天魔と名乗った男は丁寧に頭を下げる。


とっさに自己紹介をしようとした幸祐を、春樹が手で制してとめた。


「仲良くしてもらうために来たんじゃない。どうしてお前は悪事を働く」


「悪事だなんてとんでもない。こっちも商売でやってるんです。春樹くんは式神で、私は絵で商売をしているんです」


「その絵に負の力を込めてあやかしを出現させ、人々を困らせることがお前の仕事か」


春樹の声が一層低くなる。


幸祐でも今まで聞いたことがないような威圧的な声に、緊張してゴクリと唾を飲み込んだ。


「相変わらず頭が固いですねぇ」


ふぅとため息を吐きつつ亜乱が一歩近づく。