「おい、大丈夫なのか?」


心配する幸祐をよそに春樹は涼しい顔で懐からもう1枚の式神を取り出した。


「たった1枚じゃどうにもなんねぇだろ!?」


このままじゃ負けてしまうと、幸祐の顔が青くなる。


「あの大黒天に戦うつもりはない」


「え?」


視線を戻してみると、大黒天は式神から逃げ始めていた。


大きな体を揺らして山の方へ向かっている。


「追いかけろ」


春樹が一言いうと、手のひらの式神はコックリと頷き勢いよく窓から飛び出して行ったのだった。