「それなら他の人たちにも分け前をあげればいいのに……」


「バーカ。あの楼主がそんなこと考えるか。それに、あそこに取りついている大黒天が許すこともないだろうな」


そういうものなのかと納得するしかない。


そうこうしている間に式神が遊郭の上へと集まってきていた。


それはまるで竜巻のように渦を巻いている。


その中央には黒くでっぷりとした大黒点の姿があった。


「あれが大黒天……?」


幸祐が知っているものとは似てもにつかぬその姿。


脂ぎった体、両手には肉を握りしめていて、口元には食いカスがついている。


大黒天は式神を追い払うためにブンブンと両腕を振り回すのだが、決して肉を離そうとはしない。


それだけであの大黒天の食い意地が理解できた。


大黒天に殴られた式神たち力を失ってボロボロと落下していく。


落ちた式神はただの紙切れとなり、動かなくなってしまった。