式神とは陰陽師が操ることのできる神様のことで、だいたいの言うことは聞いてくれる。


春樹が作った式神たちは遊郭の壁や天井に張り付き、空いていた窓から中に飛び込んでそこにいる人たちにも張り付いた。


突然現れた和紙の人形に驚いた人々は我に返り、慌てて外へと飛び出していく。


「なんだこれは! おい、逃げるな! 逃げるな!」


楼主がみんなを引きとめようとするが、あちこちから現れて張り付いてくる式神にはたまらない。


みんな楼主の声なんて聞いていなかった。


「大黒天って、商売繁盛の神様だよな?」


遊郭から人々が出てくる様子を眺めながら幸祐が聞く。


「あぁ。でもあれは本来の大黒天じゃない」


「どういうことだ?」


「あそこに飾られていた大黒天は祀った者、つまり楼主だな。と、大黒天自身が私服を肥やすものだ。まずは楼主に金が入り、それを使って大黒天への供え物も豪華になっていくという感じだな」


春樹の説明に幸祐は顔をしかめた。