思い出そうとして見ても、出てくるのは楼主の大黒天によく似た顔ばかりだった。


「あぁ。あの絵が原因だ」


春樹の言葉に幸祐はまた首をかしげる。


「まぁ見ていろ」


そんな幸祐に説明する気は失せたのか、春樹は窓お開け放つと大割れを開けた。


中から一斉に無数の人形をした和紙が飛び出してくる。


「うわぁ!」


幸祐はその量に驚いてのけぞり、そのまま尻もちをついてしまった。


「みんなたのむ。あの遊郭にいる大黒天をおっぱらってくれ」


春樹がひとことそう言うと、和紙たちが一斉に窓から外へと飛び出した。


それはまるで川のようになって遊郭へ向かう。


「すげぇ量だな」


ようやく起き上がった幸祐が呟く。


「今回は建物がでかいからな」


春樹はそう言い、和紙の様子を眺める。


自称陰陽師である春樹の主な力は和紙を使って式神を作ることだった。