慌てている幸祐を置いて春樹はスタスタと来た道を戻り始める。


もうなにかがわかった様子だ。


「ちょっと待てよ!」


後ろからいらついた幸祐の声が聞こえてきたが、おかまいなしだ。


遊郭を出て真っすぐ自分の家へ戻る春樹。


そしてふと振り返ると汗だくでついてくる幸祐の姿があり、一瞬目を見開いた。


「なんだ、いたのか」


冷たい言葉を放って室内へ入っていく。


負けじと後を追いかける幸祐。


「いたのか、じゃねーよ! 楼主に会いたいって言ったのは春樹だろ! なんでなにもせずに戻ってきちまうんだよ! あ、まさか無理だって判断したのか? お前さぁ、少しは頑張ろうって気にはならねぇのかよ。あの遊郭はどう考えてもおかしいだろ」


「わかったんだ」


更に文句を続けようとしていた幸祐の言葉を遮って春樹は言った。


「は?」


「なにが原因かわかった」


その言葉に幸祐は瞬きを繰り返す。