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楼主はニヤケた顔の太った男だった。


でっぷりと出た腹に常に口角を上げているその顔はどこか大黒天に似ている。


「どうもいらっしゃいませ」


2人を客と勘違いしているのか楼主は手もみをして出迎える。


「今ならどの娘も空いていますよ」


言葉を続ける楼主に幸祐は戸惑い、春樹を見る。


春樹は建物の中をジロジロと見回し、腕組みをしている。


「あの、お客様?」


楼主に呼ばれて春樹の視線がようやく男へ向いた。


すると今度は男の顔に自分の顔をグッと近づけてマジマジと見つめ始める。


「な、なんですか旦那。やけに男前じゃありませんか。もしかして男色の方の……」


「違います違います! ほら春樹、早くなにか言わねぇと勘違いされるぞ!」


慌てて幸祐が2人の間に割って入って引き離す。


楼主は残念そうな顔を浮かべて春樹を見ている。


「旦那ならすぐに人気が出そうですがね」


「そっちでもないから!」