翌日、春樹と幸祐の2人は問題の遊郭へ来ていた。


江戸はどこも華やいでいるけれど、ここだけは格別だった。


大きな門に3階建ての建物。


中に入ったことはないが、きっともっと豪華なのだろう。


2人はつれだって格子窓へと近づいた。


昨日と同じように、青白く不健康そうな顔をした遊女たちが客がつくのを待っている。


「規子さんはどこだ?」


春樹に聞かれて幸祐は一番奥に座っている赤い着物の女性を指差した。


視線を向けると色白で美しい女性が座っている。


しかし、その目はうつろで他の遊女たちと同じようにやせ細っている。


幼馴染のこんな姿を見たら、誰だって気が動転してしまうだろう。


それにあの萩野という男、この規子のことが好きな様子だった。


「規子さん」


春樹が声をかけるが、規子は反応しない。


聞こえていないのかと思って何度も声をかけるが、結果は同じだった。


「な? これじゃどうして遊女になっちまったのかもわからねぇ」


幸祐はお手上げだという様子で左右に首を振る。


その後規子の友人である八重子の姿も見つけたが、同様に会話をすることは叶わなかったのだった。