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「な、金がなくても土産があれば引き受けてくれるって言っただろ?」


春樹の家から出て、幸祐は萩野へ言った。


「はい。あの、本当にありがとうございました」


萩野は幸祐へ向けて深く頭を下げる。


「いいっていいって! 遊郭の前で泣いてるあんたを見た時、さすがにほっとけないなぁと思ったんだ」


「恥ずかしいところを見られてしまいました」


萩野は少し頬を赤らめてうつむく。


幸祐は散歩をしていたところ遊郭の前を通りかかり、格子窓の向こうにいる遊女たちを見て泣き崩れていたのだ。


一体全体なにがあったのか。


もしや遊郭に好きな女でもできたんじゃないか。


それとも遊女に入れ込みすぎてもう遊ぶ金がなくなったか。


色々な憶測が一瞬にして飛び交った幸祐は声をかけずにはいられなかった。


パッと見た感じ遊女に入れ込んでいるようにも見えなかったし、実際にそうだった。


萩野の話を聞いた上で格子窓の向こうの遊女たちを見てみると、確かに様子がおかしかった。


みんな目が座っているというか、どこを見ているのかわからないのだ。


ろくに食べずに働いているというのもうなづける。