「キヨハ、こっちこっち」

 「ごめんね、ちょっと着付け手間取っちゃって」

 「俺が頼んだんだからいいよそんなの、かわいいね」

 八月の二日。いつもより少し多く人が行きかう八王子駅には浴衣のカップルや子供も多い。団扇を配っている人たちを通り過ぎると改札の近くにレイがいた。そういえば同級生の私服を見るのって初めてかもしれない。

 「なんか、イメージ通りかも」

 「え、もっと奇抜な格好のがよかった?」

 「いや、ごめん、そういう意味じゃないんだけど」

 ジュンイチの私服も、フォーマルではないけどあまり遊びがない感じ。上は半袖のシャツだけどボトムにハーフパンツとか絶対履かないだろう。

 同じ環境で育つと似たようなファッションセンスになるんだなあ、とわけもわからず感心してしまう。もっともくたびれたTシャツにスウェットで過ごせるような家じゃないってだけかもしれないけれど。

 「俺、こんな規模のでかい祭はじめてなんだよね」

 「そうなの?」

 「友達少ないからね」

 「嘘ばっかり」

 「これが本当なんだよなー」

 レイの真意がわからない。ジュンイチと似てるなと思えば正反対に見えて、改めて話してみたらやっぱり似てることも多くて結局外面じゃない部分っていうのはまだよく知らない。電話してるときも今も教室でのレイのキャラとは絶対違うけれどこれだってただ大人しくしてるだけで本質って感じじゃない気がする。

 本当にレイは期待されて、期待に応えようとしてるだけの順風満帆な人生を送ってるんだろうか。それって苦手意識とかやっかみとかそういうもの含めたジュンイチの主観なんじゃないかとか、話を聞く限りではどちらも親子らしい背景が全く見えない。

 なんならレイはジュンイチに比べてお母さんと過ごした時間だってもっともっと短いだろうから弟の目線になったらジュンイチをやっかむことだってあるだろう。踏み込んで聞いたらボロが出そうだけど気になるのも本当だ。ジュンイチのこともレイのこともちゃんと知りたい。私が結局どうしたいのかもはっきりしないのになにもわからないままなんてそんなのは嫌だ。